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贈朝鮮通信使屏風  『鹿島美術研究』年報第42号別冊(2025)を参考にして

 現段階で 確認できる文化度朝鮮通信使に対する幕府からの主要な贈答品は次のとおり。 1.贈朝鮮通信使屏風 江戸幕府は朝鮮通信使来訪のたびに朝鮮国王へ屏風を贈るのを慣例としており、文化8年にも特別に制作された屏風10双が贈られた。この「贈朝鮮通信使屏風」とは私の命名であり、学界の承認を得ていない。「贈朝屏風」とか「贈朝鮮国王屏風」などと呼称されてきたが、愚考によると、その実態に一番近い「「贈朝鮮通信使屏風」の呼称を提案したい。 <参考情報> 屋代弘賢(1758〜1841)『文化八年賜朝鮮国王御屏風図考』(東京大学総合図書館蔵)       武田恒夫「贈朝鮮国王屏風について」『日本美術工芸』第639号。1991エ年他)       鄭 美娟「 江戸幕府による外交贈答用絵画に関する基礎的調査研究─文化度贈朝屏風の「桜町・菊                亭図」をめぐって─」『鹿島 美術研究年報』第42号別冊(2025) 確認されている画題は以下の10双。 分類 画題 武家の権威 頼信海渡・義家雁行乱知伏兵図 武家の権威 頼朝富士巻狩図 公家文化 舞楽図 公家文化 博雅三位琵琶伝授・時秋笙曲伝授図 公家文化 桜町・菊亭図 支配者の象徴 堂上放鷹図 支配者の象徴 牧牛野馬図 日本の自然 四季大和山水図 日本の自然 老松に日・古木梅に月図 日本の自然 春秋花鳥図 t これらは徳川将軍家の権威や日本文化を象徴する内容で構成されていた、 2. 絵画 幕府は朝鮮国王への外交贈答品として屏風以外にも絵画を用意しており、文化度でも御用絵師が制作した作品群が贈られました。 朝鮮国王へ贈られた絵画(贈朝屏風・贈答絵画)一覧 を整理すると次のようになります。 通信使 年 作者 作品名 画題分類 現蔵先 第8回 1711(正徳元) 狩野春湖(推定) 楠正成教子図 日本歴史画 兵庫県立歴史博物館(伝) [rekihaku.p...yogo.lg.jp] 第8回 1711(正徳元) 狩野柳雪秀信 源為朝大矢図(鎮西八郎為朝図) 武将画 韓国国立中央博物館 [rekihaku.p...yogo.lg.jp] 第10回 1748(寛延元) 狩野友甫宴信 苅田雁秋草図(芙蓉雁図) 花鳥画 韓国国立古宮博物館 [rekihaku.p...yogo.lg.jp] , [enchiren.com] 第1...

筆談唱和に「旧法あり」-- -草場珮川著『津島日記』を中心に

筆談唱和に「旧法あり」 -草場珮川著『津島日記』を中心に 1. はじめに 本稿の目的は、江戸時代に12回にわたり訪日した朝鮮通信使と日本人との間に行われた筆談唱和の実相に関して、草場珮川著『津島日記』を通して、主に約束事や制約などの「旧法」の有無を検討することにある。 周知の記事であるが、 「按ずるに、かの使者来聘ごとに、必筆談唱和あり。天和正徳の頃よりして、その事やや盛なり、その書類冊をなすもの百数十巻にいたる」(『通航一覧』巻108、朝鮮国部84、263頁) とあるように、当時から朝鮮通信使たちの筆談唱和の刊本や写本が多数知られていた。高橋昌彦氏の労作「和韓唱酬・筆語図書目録」下関女子短期大学紀要9号、下関女子短期大学、1990年)によって現存する筆談唱和集のリストが作成され、その全貌の一端が判明した。そのリストを出発点として、新資料発見のたびに、また各地の訪書の途次に偶見した異本などの諸資料を高橋氏は増収しているが、機会を得て、高橋氏から最新版を提供して頂き、拙編『Global時代の朝鮮通信使』(花書院、2010年、211―291頁)に収録したことがある。最新情報によると、現在までに165篇(刊本、もしくは写本)の筆談唱和集の現存が確認できる1。 (1)寛永13年度----4 (2)寛永20年度----3 (3)明暦元年度----5 (4)天和2年度----15 (5)正徳元年度----25 (6)享保4年度----21 (7)延享5年度----40 (8)宝暦14年度----43 (9)文化8年度----9 ところで、その研究数は必ずしも多くないものの、筆談唱和の内容分析などに関する文学的あるいは思想的研究は着手済みであると言って良い。しかしながら、筆談唱和がいかに行われたか、あるいは筆談唱和は誰にもオープンに開かれたものか、さらには江戸幕府側が制定した筆談唱和をめぐる規約が存在したかなどを解明した研究は、管見の限りでは知らない。本研究の狙いは、ここにある。 ところで、ふと考えてみるならば、そもそも朝鮮通信使一行には、毎回、対馬藩所属の朝鮮語通詞や朝鮮国側の日本語通詞も同行しており、朝鮮人と日本人の間のコミュニケーションに不便が無かったはずである。例えば、江戸時代で最初の慶長12年度の朝鮮通信使約500名には、都訓導各1名・訳官6名・小通事4名(宣祖40年7...